「墓じまいという言葉を聞いたけれど、具体的に何をするの?」「お墓を壊してなくすこと?」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。
墓じまいは、単に墓石を撤去することだけを意味するものではありません。一般的には、今あるお墓を閉じるために、家族や墓地管理者と相談し、遺骨の行き先を考え、必要な手続きを行い、墓石を撤去して墓地を返還するまでの一連の対応を指します。
また、墓じまいと一緒に使われることが多い「改葬」は、墓じまいとまったく同じ意味ではありません。改葬は法律で定められた言葉で、遺骨などを現在の墓地や納骨堂から別の墳墓・納骨堂へ移す場合に関係します。
この記事では、墓じまいとは何なのかを初めて調べる方に向けて、意味・遺骨・手続き・費用・流れまで、最初に知っておきたい全体像を整理します。
- 墓じまいとは何をすることなのか
- 墓じまいと改葬は何が違うのか
- 墓じまいした後の遺骨はどうするのか
- どのような手続きや費用があるのか
- 墓じまいを考え始めたら何から確認すればよいのか
まだ墓じまいをすると決めていない段階でも問題ありません。まず全体像を知り、自分や家族の場合は何を調べる必要があるのかを整理していきましょう。
墓じまいとは?お墓を撤去するだけではない

墓じまいは法律上の正式な手続き名ではなく、一般的に「現在のお墓を閉じるために行う一連の対応」を表す言葉として使われています。
そのため、「墓じまい=墓石を撤去する工事」とだけ考えると、必要なことを見落としてしまう可能性があります。
お墓の中に遺骨が納められている場合、その遺骨を今後どうするのかを考えなければなりません。別のお墓や納骨堂などへ移す場合には、改葬の手続きも関係します。さらに墓地や霊園にはそれぞれ利用規則があり、墓地を返還するときの手続きや原状回復の方法を確認する必要があります。
つまり墓じまいでは、大きく分けると「遺骨」「手続き」「墓石」「墓地」の4つを一緒に考えることになります。
墓じまいに関係する言葉を整理
墓じまいについて調べていると、「改葬」「墓石撤去」「永代供養」など似た場面で使われる言葉が多く出てきます。それぞれは同じ意味ではありません。
| 言葉 | 意味・役割 |
|---|---|
| 墓じまい | 現在のお墓を閉じるために行う一連の対応を表す一般的な言葉 |
| 改葬 | 埋葬した死体や、埋蔵・収蔵されている焼骨を、他の墳墓または納骨堂へ移すこと |
| 墓石撤去 | 現在の墓石や付属物などを撤去し、必要に応じて区画を整える工事 |
| 永代供養 | 寺院・霊園などが遺骨の管理や供養を行う仕組みとして使われる言葉。内容や期間、供養方法は施設によって異なる |
墓じまいをすると必ず永代供養を選ぶわけではありませんし、墓石を撤去しただけで墓じまいに必要なすべての対応が終わるとも限りません。
まずは、それぞれを別のものとして理解しておくと、その後の情報を整理しやすくなります。
墓じまいでは何をする?まず知っておきたい4つのこと

墓じまいを具体的に進める前に、「何をしなければならないのか」を大きく4つに分けて考えてみましょう。細かな順番や必要書類は後から確認できます。最初からすべてを覚える必要はありません。
1.家族や関係者と相談する
最初に確認したいのが、家族や親族の考えです。お墓には複数の家族・親族が関わっていることもあり、管理している人だけで決めると、後から意見の違いが生じる可能性があります。
特に、「本当に現在のお墓を閉じるのか」「遺骨をどこへ移すのか」「今後どのようにお参りするのか」といった点は、早めに共有しておくと話を進めやすくなります。
2.遺骨の行き先を考える
墓じまいをして現在のお墓をなくしても、そこに納められている遺骨までなくなるわけではありません。
別のお墓、永代供養墓、納骨堂、樹木葬など、今後の納骨先を検討する必要があります。手元供養や散骨を考えるケースもありますが、通常の墓地・納骨堂への改葬とは手続きの考え方が異なるため、現在の墓地管理者や自治体などへ確認することが大切です。
3.必要な手続きを確認する
現在のお墓から遺骨を別の墳墓や納骨堂へ移す場合は、「改葬」が関係します。改葬を行うには、市町村長の許可が必要です。
ただし、申請書の様式や追加で求められる書類、申請方法などは自治体によって異なる場合があります。「この3枚が全国共通で必ず必要」といった形で判断せず、現在遺骨がある墓地・納骨堂の所在地を管轄する自治体の案内を確認しましょう。
4.墓石を撤去して墓地を返還する
墓地を返還する場合は、墓石や付属物などを撤去し、墓地管理者が定める状態に戻すことが一般的です。
ただし、どこまで撤去するのか、どの石材店へ依頼できるのか、工事前に申請が必要なのかなどは墓地・霊園によって異なります。墓石業者へ依頼する前に、まず墓地管理者へ返還時のルールを確認しておくと安心です。
墓じまいと「改葬」は何が違う?

墓じまいと改葬は一緒に行われることが多いため、同じ意味だと思われやすい言葉です。しかし、法律上は区別して考える必要があります。
「墓地、埋葬等に関する法律」第2条では、改葬について、埋葬した死体を他の墳墓へ移すこと、または埋蔵・収蔵した焼骨を他の墳墓・納骨堂へ移すことと定めています。
墓じまいはお墓を閉じる一連の対応、改葬は遺骨等を別の墳墓・納骨堂へ移す行為と考えると、違いを理解しやすくなります。
墓じまいの中で改葬が必要になることがある
たとえば、現在のお墓を撤去し、遺骨を別の霊園のお墓や納骨堂へ移す場合には、「現在のお墓を閉じる」という墓じまいと、「遺骨を別の墳墓・納骨堂へ移す」という改葬の両方が関係します。
この場合、墓石業者へ撤去工事を頼むだけでは完了しません。改葬に必要な行政手続きを行い、新しい納骨先への受け入れについても確認する必要があります。
改葬の申請方法や書類については、別記事で詳しく整理します。
■【内部リンク:3022「墓じまいの改葬手続きとは?改葬許可の流れと必要書類」公開後、ブログカードを挿入】
墓じまいした後、遺骨はどうする?

墓じまいを検討するときに、墓石の撤去と同じくらい大切なのが「遺骨を今後どうするか」です。墓じまい後の選択肢は一つではありません。
永代供養墓
寺院や霊園などが遺骨の管理や供養を行うお墓です。個別に納骨する期間や合祀の時期、供養方法、参拝方法などは施設によって異なります。「永代供養」という名称だけで判断せず、具体的な管理方法を確認することが重要です。
納骨堂
建物などの施設内に遺骨を収蔵する方法です。ロッカー型、仏壇型、自動搬送型などさまざまな形式があります。利用期間や更新、将来の合祀などの条件は施設ごとに異なります。
樹木葬
樹木や草花などを墓標の一部として利用する墓地です。ただし、「樹木葬」という名称でも納骨方法や区画の形式、個別埋葬の期間などには違いがあります。
手元供養や散骨という選択肢もある
遺骨の一部または全部を自宅などで保管する手元供養や、焼骨を粉状にして海などへ散布する散骨を検討する人もいます。
ただし、墓埋法上の「改葬」は、他の墳墓または納骨堂へ移す行為を指します。手元供養や散骨は通常の墓地・納骨堂への改葬とは扱いが異なるため、現在のお墓から遺骨を取り出す際の手続きや墓地側の規則について、墓地管理者や自治体へ事前に確認してください。
遺骨の行き先については、費用だけでなく「今後誰がお参りするのか」「どこなら通えるのか」「将来的な管理をどうするのか」まで含めて考えると選びやすくなります。
■【内部リンク:3046「墓じまい後の納骨先・供養方法の選び方」公開後、ブログカードを挿入】
墓じまいにはどんな手続きが必要?
墓じまいで必要になる手続きは、遺骨をどこへ移すのか、現在のお墓がどのような墓地なのかなどによって変わります。特に重要なのが、別の墳墓や納骨堂へ遺骨を移す場合の「改葬許可」です。
改葬する場合は市町村長の許可が必要
墓地、埋葬等に関する法律第5条では、改葬を行おうとする人は市町村長の許可を受けなければならないと定めています。
許可が出ると「改葬許可証」が交付されます。新しい墓地や納骨堂では、原則としてこの改葬許可証を提出して遺骨を納めることになります。
申請先は現在遺骨がある場所の市区町村
改葬許可を出すのは、原則として現在、遺骨や遺体がある場所を管轄する市区町村です。
たとえば、住んでいる場所が東京都でも、現在のお墓が別の県にある場合は、現在のお墓がある市区町村へ申請することになります。
新しい納骨先の所在地や、申請者の住所地へ申請するとは限らない点に注意しましょう。
必要書類は自治体の公式案内を確認する
墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条では、改葬許可申請書に記載する事項や、現在の墓地・納骨堂の管理者が作成する埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面などについて定めています。
一方で、市町村長が特に必要と認める書類についての規定もあり、自治体によって様式や必要書類、申請方法が異なる場合があります。
実際に自治体の案内を確認すると、受入先を確認するための書類を求める自治体や、本人確認書類、委任状、返信用封筒などが必要になるケースもあります。
そのため、「改葬許可申請書・埋蔵証明書・受入証明書の3点が全国共通で必須」と決めつけず、現在のお墓がある自治体の公式サイトや担当窓口で最新情報を確認してください。
閉眼供養・魂抜きと行政手続きは別に考える
墓石を撤去する際、「閉眼供養」「魂抜き」などと呼ばれる儀式を行うことがあります。
これらは宗教・宗派・寺院・地域などの考え方や慣習に関係するものであり、改葬許可申請そのものと同じ行政手続きではありません。
すべてのお墓で全国一律に必須と考えるのではなく、寺院墓地の場合は寺院へ、霊園や共同墓地の場合は管理者へ確認するとよいでしょう。
改葬手続きの詳細は、以下の記事で掘り下げます。
■【内部リンク:3022「墓じまいの改葬手続きとは?改葬許可の流れと必要書類」公開後、ブログカードを挿入】
墓じまいにはどんな費用がかかる?
墓じまいには複数の費用が関係します。ただし、お墓の大きさや立地、墓地の規則、遺骨の数、新しい供養先などによって変わるため、「墓じまいは必ず○万円」と全国一律の金額で考えることはできません。
まずは金額よりも、どのような項目に費用が発生する可能性があるのかを把握しておきましょう。
- 墓石の撤去・運搬・処分・墓地区画の原状回復に関する費用
- 証明書の取得など手続きに伴って発生する可能性がある費用
- 新しいお墓、永代供養墓、納骨堂、樹木葬など新しい供養先の費用
- 寺院や宗派、地域の慣習などに応じて発生する可能性がある費用
特に墓石撤去費用は、墓石の量だけでなく、重機が入れるか、階段や狭い通路があるか、搬出しやすい立地かといった条件でも変わります。
また、新しい供養先についても、契約内容によって費用構成が大きく異なります。最初から総額だけを比べるのではなく、「何の費用が含まれているのか」を確認することが大切です。
墓じまいにかかる費用については、別記事で項目ごとに詳しく解説します。
■【内部リンク:3011「墓じまい費用はいくらかかる?費用項目を解説」公開後、ブログカードを挿入】
墓じまいはどんな流れで進める?

墓じまいの進め方は墓地や遺骨の行き先によって異なりますが、全体像としては次のような順番で考えると整理しやすくなります。
- 家族・親族と相談する
- 遺骨の行き先を検討する
- 墓地管理者と自治体へ必要な手続きを確認する
- 必要に応じて石材店などへ相談・見積もりを依頼する
- 改葬など必要な手続きを行い、遺骨を移す
- 墓石を撤去し、墓地区画を整える
- 墓地管理者のルールに従って墓地を返還する
これはあくまで全体像です。墓地によっては工事前の届け出が必要だったり、指定石材店が決められていたりする場合があります。また、改葬先の契約を済ませてから手続きを進める必要があるケースもあります。
そのため、「先に墓石を撤去してから考えればよい」と進めるのではなく、家族、現在の墓地管理者、新しい供養先、自治体の情報を確認しながら順番を決めることが重要です。
各ステップで「いつ・誰に・何を確認すればよいのか」は、次の記事で詳しく解説します。
■【内部リンク:3002「墓じまいの流れを7ステップで解説」公開後、ブログカードを挿入】
家族・寺院・墓地管理者には早めに相談する
墓じまいでは、行政手続きだけでなく、複数の人や施設との調整が必要になることがあります。特に家族や現在の墓地管理者には、話が具体化する前の段階から相談しておくと進めやすくなります。